成果報告書

2018年度 共同利用・共同研究 成果報告書

  1. 課題番号:共2018-01
    Sn法によるニュートリノ輸送及び中性子輸送計算手法の相互比較から探る高度化
  2. 課題番号:共2018-03
    クロマチン免疫沈降シークエンス法を用いた放射線照射後の遺伝子発現変動の解析
  3. 課題番号:共2018-04
    放射線によって誘発されるDNA損傷応答分子ネットワークの理解と制御
  4. 課題番号:共2018-05
    Al4SiC4を焼結助剤とした炭化ケイ素セラミックスの焼結性及びその特性評価
  5. 課題番号:共2018-06
    電気泳動堆積法による炭化ケイ素線維への窒化ホウ素界面層形成技術の開発
  6. 課題番号:共2018-07
    高エネルギー粒子閉じ込めの有限ラーマー半径効果の解析
  7. 課題番号:共2018-08
    極限環境用シロキサン系化合物の吸着材料の研究
  8. 課題番号:共2018-09
    陽子非弾性散乱を用いたリチウム検出法の開発
  9. 課題番号:共2018-10
    ホウ素中性子捕捉療法のリアルタイム線量評価に向けたコンプトンイメージング技術の開発
  10. 課題番号:共2018-11
    高速炉サイクルシナリオによるTRU物質収支と核不拡散性への影響に関する研究-燃焼遷移行列を用いた物質収支解析精度向上方策一
  11. 課題番号:共2018-12
    シュミレーションと細胞生物学の融合による低線量・低線量率放射線影響解析
  12. 課題番号:共2018-13
    放射線照射下腐食試験用の液体金属封入カプセルの設計研究
  13. 課題番号:共2018-14
    フライホイールエネルギー貯蔵システム実用化に向けた自励誘導発電機の制御性向上に関する研究
  14. 課題番号:共2018-15
    高周波電子銃共同研究拠点形成のためのフィージビリティ研究
  15. 課題番号:共2018-16
    燃料デブリの状態変化機構の解明
  16. 課題番号:共2018-17
    放射線物質含有マイクロ粒子の生成機構の解明研究
  17. 課題番号:共2018-18
    希土類元素の糸状菌による取り込み機構の解明研究

課題番号:共2018-01

研究代表者: 千葉 敏
研究分担者(所属): 住吉光介(沼津高専・教授)
石塚知香子(千葉研・助教)
研究課題名: Sn法によるニュートリノ輸送及び中性子輸送計算手法の相互比較から探る高度化
研究期間: 平成30年7月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録:

天空にとつぜん現れ他の星々を圧倒して急激に輝きやがて消えて行く超新星は、その名に反し新しい星の誕生ではなく星の終焉をかざる大爆発である。宇宙に存在する重い元素の多くはこの時合成されると考えられている。鍵を握るのは素粒子ニュートリノであり,星が進化し超新星爆発に至る道筋は原子核や核力の性質から理解できる。高度な計算機シミュレーションによりこの道筋の理解が進んでいるが、その中核を担うのはニュートリノ輸送計算である。この計算は原子力における中性子輸送計算と多くを共有するため、本研究では両者の比較から共通点及び相違点を洗い出し、互いにとって有益な情報及び相互協力の可能性を探った。

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課題番号:共2018-03

研究代表者:

島田幹男

研究分担者(所属): 北條宏徳 (東京大学工学系研究科・バイオエンジニアリング専攻・助教)
塚田海馬(原子核工学コース・大学院生/D1)
香川 望(原子核工学コース・大学院生/M2)
研究課題名: クロマチン免疫沈降シークエンス法を用いた放射線照射後の遺伝子発現変動の解析
研究期間: 平成30年6月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録: 放射線は細胞内ゲノムDNAに損傷を与え細胞死や突然変異を惹起する。DNA損傷に対する生体応答システムとしてDNA修復機構が存在し、損傷したDNAを即座に修復する。DNA修復機構は遺伝子発現レベルで複雑に制御されており、数十、数百という分子群が数秒単位の速度でダイナミックに変動する。しかし、放射線照射後の細胞内の遺伝子発現プロファイルは不明な点が多い。本研究ではクロマチン免疫沈降シークエンス(ChiP-Seq)法およびRNA-Seq法を用いて放射線照射後のDNA損傷応答遺伝子発現機構を解析することを目的とする。

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課題番号:共2018-04

研究代表者:

島田幹男

研究分担者(所属): 柳原晃弘(東北医科薬科大学・医学部放射線基礎医学講座・助教)
塚田海馬(原子核工学コース・大学院生/D1)
香川 望(原子核工学コース・大学院生/M2)
研究課題名: 放射線によって誘発されるDNA損傷応答分子ネットワークの理解と制御
研究期間: 平成30年6月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録: 放射線による生体影響のうち最も深刻なのは細胞内DNAに与える損傷である。細胞内DNA損傷応答機構はゲノムDNAの安定性維持のために必須の機構で、多くのタンパク質により厳密に制御されている。それらの分子ネットワークの解明は放射線防護への貢献や医療応用として抗がん剤の開発も期待出来る。本研究ではDNA損傷応答のうち相同組換えタンパク質の新規相互作用タンパク質の同定を実施した。

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課題番号:共2018-05

研究代表者: 吉田克己
研究分担者(所属): 西村聡之(物質・材料研究機構 構造材料研究拠点 構造用非酸化物セラミックスグループ・グループリーダー)
グバレビッチ アンナ(先導原子力研究所・助教)
渡邊 翼(工学部 無機材料工学科/学部4年)
研究課題名: Al4SiC4を焼結助剤とした炭化ケイ素セラミックスの焼結性及びその特性評価
研究期間: 平成30年7月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録: 3元系化合物は金属とセラミックスとを組み合わせた特徴を有するユニークな材料であり,高強度,高い電気伝導性及び熱伝導性,優れた耐食性,耐熱性、耐熱衝撃性及び機械加工性等の特性を有する.本研究ではAl、Si、Cからなる3元系化合物Al4SiC4に注目し,Al4SiC4焼結体及びAl4SiC4を焼結助剤としたSiC焼結体を放電プラズマ焼結装置(SPS)により作製し,その熱的・機械的特性及び高温大気中での耐酸化特性を評価した.

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課題番号:共2018-06

研究代表者: 吉田克己
研究分担者(所属): 小谷政規(JAXA 航空技術部門・主任研究開発員)
グバレビッチ アンナ(先導原子力研究所・助教)
研究課題名:

電気泳動堆積法による炭化ケイ素繊維への窒化ホウ素界面層形成技術の開発

研究期間: 平成30年7月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録:

炭化ケイ素(SiC)繊維強化SiC(SiCf/SiC)複合材料は,次世代高信頼性耐熱材料として原子力・核融合炉分野や航空宇宙分野等での適用が期待されている.本研究では,電気泳動堆積(EPD)法によるSiC/SiC複合材料作製プロセスを軸として,BN懸濁液の調製及びEPD法によるSiC繊維表面へのBN界面層形成の最適化を図ることで,機械的特性に優れるBN界面層を有したSiC/SiC複合材料の作製に成功した.

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課題番号:共2018-07

研究代表者: 筒井広明
研究分担者(所属): 篠原孝司(量子科学技術研究開発機構・核融合エネルギー研究開発部門・上席研究員)
飯尾俊二(先導原研・教授)
谷 啓二(先導原研・研究員)
Anggi Budi Kurniawan(融合理工学系・D2)
研究課題名: 高エネルギー粒子閉じ込めの有限ラーマー半径効果の解析
研究期間: 平成30年4月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録:

従来は実験結果を十分に説明できる等の理由で無視されてきた有限ラーマー半径効果を、full-orbit計算と比較することにより、その物理学的(定性的)効果と工学的(定量的)影響を調べた。現段階で得られた結果では、旋回中心近似無しの軌道をジャイロ位相平均して得られる軌道(旋回中心軌道に相当)は、旋回中心近似で得られた軌道から外れ、リップル共鳴条件が変わる可能性が示された。

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課題番号:共2018-08

研究代表者: グバレビッチ アンナ
研究分担者(所属): 山中理代(研究開発部門・研究開発員)
吉田克己(准教授)
研究課題名: 極限環境用シロキサン系化合物の吸着材料の研究
研究期間: 平成30年7月1日 ~ 平成31年3月31 日
抄録: 軌道上運用時に発生する宇宙機の使用材料からのアウトガスに起因するコンタミネーション(汚染)問題は運用の妨げとなるため、解決手法の新規創出が渇望されている。本研究ではアウトガスの中でも、特に軌道上での除去が難しいとされるシリコーン系接着剤由来のシロキサン系化合物に着目。シロキサン系化合物の宇宙機表面への付着を極力低減でき、かつ、宇宙環境中で使用可能な吸着材料を開発する。今年度は、最適な吸着材料候補となる材料の調査・検討と、試作品の簡易評価を実施した。

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課題番号:共2018-09

研究代表者: 片渕竜也
研究分担者(所属): 鈴井伸郎(量子科学技術研究開発機構・量子ビーム科学研究部門・高崎量子応用研究所放射線生物応用研究部・主幹研究員)
研究課題名: 陽子非弾性散乱を用いたリチウム検出法の開発
研究期間: 平成30年6月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録: 本研究では、新しいリチウム検出法として非弾性散乱7Li(p,p’)7Li*を用いた分析法を開発する。放出される陽子とガンマ線を同時計測する。7Li(p,p’)7Li*反応の核データから検出手法の有効性を検証した。また、ガンマ線検出に用いるLaBr3検出器の検出効率を実際に測定し検証した。

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課題番号:共2018-10

研究代表者: 片渕竜也
研究分担者(所属): 河地有木(量子科学技術研究開発機構・量子ビーム科学研究部門・高崎量子応用研究所放射線生物応用研究部・プロジェクト「RIイメージング研究」リーダー)
研究課題名: ホウ素中性子捕捉療法のリアルタイム線量評価に向けたコンプトンイメージング技術の開発
研究期間: 平成30年6月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録: ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)のリアルタイム線量評価に向けてコンプトンイメージング技術の開発を行った。東工大ペレトロン加速器でガンマ線検出器を用いた実験を行った。実験結果をもとに線量評価システムで重要となる中性子照射時のバックグラウンドと遮蔽について検討した。

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課題番号:共2018-11

研究代表者: 相楽 洋
研究分担者(所属): 大滝 明(日本原子力研究開発・高速炉・新型炉研究開発部門・技術副主幹)
藤岡里英(原子核工学コース・博士課程)
研究課題名: 高速炉サイクルシナリオによるTRU物質収支と核不拡散性への影響に関する研究 ―燃焼遷移行列を用いた物質収支解析精度向上方策-
研究期間: 平成30年度
抄録: 高速炉サイクルの物質収支と核不拡散性への影響評価を目的として、プルトニウム利用戦略に適した高速炉等の炉心設計を行う東工大と、核燃料サイクル諸量解析コードFAMILY-21の開発および同コードによる研究実績が豊富な原子力機構の知見を活用した共同研究を実施した。多様なTRU燃料組成や炉心構成の高速炉と軽水炉を対象に燃焼遷移行列を作成する手法を確立し、FAMILY-21への適用化と計算精度向上させ、シナリオ解析評価を行った。

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課題番号:共2018-12

研究代表者: 松本義久
研究分担者(所属): 渡邊立子(量研機構・量子ビーム・放射場生体分子科学研究P・上席研究員)
島田幹男(先導原子力研究所・助教)
土屋尚代(融合理工学系原子核工学コース・博士2年)
服部佑哉(工学院システム制御系・助教)
研究課題名: シミュレーションと細胞生物学の融合による低線量・低線量率放射線影響解析
研究期間: 平成30年7月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録:

低線量・低線量率放射線の影響には、高線量・高線量率放射線の影響と量的のみならず、質的に異なる側面がある。特に、ミクロな空間で見たエネルギー付与分布の不均一性の影響が顕著に現れる。また、低線量率長期照射の場合、DNA損傷生成とDNA修復のバランスによって線量率効果が現れる。さらに、細胞周期進行に伴って放射線感受性が変動することを考慮する必要がある。本研究では、シミュレーションと細胞生物学実験の融合により、低線量・低線量率放射線の細胞生存、ゲノム安定性に与える影響を解析することを目的とする。

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課題番号:共2018-13

研究代表者: 近藤正聡
研究分担者(所属): 秋吉優史(大阪府立大学 研究推進機構・放射線研究センター 准教授)
田中照也(核融合科学研究所 ヘリカル研究部 准教授)
高橋尚希(工学院機械系原子核工学コース 修士課程1年)
研究課題名: 放射線照射下腐食試験用の液体金属封入カプセルの設計研究
研究期間: 平成30年6月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録:

核融合炉や高速炉の冷却材として液体金属が期待されている。構造材料との材料共存性が課題であるが、その改善策として保護性酸化被膜を材料表面に形成する手法が検討されている。今後の課題として、放射線照射環境下の耐食性を明らかにする事が重要である。本課題では、放射線照射条件下を想定した薄板積層構造の試験片封入カプセルを設計し製作した。キャプセルの機能(構造健全性、共存性試験としての有効性など)について、非照射条件化で検証した。

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課題番号:共2018-14

研究代表者: 飯尾俊二
研究分担者(所属): 藤澤彰英(九州大学 応用力学研究所 教授)
村山真道(東京工業大学 環境・社会理工学院 博士課程)
研究課題名: フライホイールエネルギー貯蔵システム実用化に向けた自励誘導発電機の制御性向上に関する研究
研究期間: 平成30年7月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録: 本研究では、自励誘導発電機に変圧器が接続された際の発電機の挙動の変化について検討を行った。自励誘導発電機は供給される無効電力の大きさによって出力電圧が変動するという特徴がある。これまでの実験では変圧器を用いずにダイオード整流器のみを接続する回路方式で実験が行われていたが、変圧器が供給する無効電力を打ち消すようにキャパシタを接続することで変圧器の有無にかかわらず制御が可能であることを明らかにした。

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課題番号:共2018-15

研究代表者: 林﨑規託
研究分担者(所属): 佐藤大輔(産業技術総合研究所)
村田亜希(理工学研究科原子核工学専攻・D3)
研究課題名: 高周波電子銃共同研究拠点形成のためのフィージビリティ研究
研究期間: 平成30年7月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録: 高周波電子銃は,高周波電場を用いて電子ビームを生成・加速する加速器技術である。電子ビームの応用普及に向けて小型で安価な電子銃の必要性は高いことから,我が国の大学における高周波電子銃の共同研究拠点を先導原子力研究所に形成すべく,そのフィージビリスタディを進めている。その2年目として,高周波電子銃の電源となるクライストロンシステムの整備を継続するとともに,東工大オリジナルデザインの多目的高周波熱電子銃の設計を進展させた。

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課題番号:共2018-16

研究代表者: 大貫敏彦
研究分担者(所属):

鷲谷忠博(JAEA・福島研究開発部門 廃炉国際共同研究センター・廃炉リスク管理研究ディビジョン長)
矢野公彦(JAEA・廃炉国際共同研究センター・マネージャー)
北垣 徹(JAEA・廃炉国際共同研究センター・研究員)
Liu Jiang(JAEA・廃炉国際共同研究センター・博士研究員)
Meier Roland(JAEA・廃炉国際共同研究センター・博士研究員)
Yin Xiangbiao(JAEA・廃炉国際共同研究センター・博士研究員)
加藤友彰(先導原子力研究所・D2)

研究課題名: 燃料デブリの状態変化機構の解明
研究期間: 平成30年6月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録:

環境中において酸化数や可溶性が変化する燃料デブリの微生物による状態変化機構を解明し、燃料デブリの環境中における経年変化プロセスなどの解明するための基礎的データとすることを目的として、CeとZrを含む燃料デブリ酸化物を作製し,微生物による溶解の可能性を調べた。

その結果、僅かであるがCeが溶け出すことを明らかにした。

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課題番号:共2018-17

研究代表者: 大貫敏彦
研究分担者(所属): 宇都宮 聡(九州大学・理学府・化学科・准教授)
諸岡和也(九州大学・理学府・化学科・修士1年)
加藤友彰(先導原子力研究所・D2)
研究課題名: 放射性物質含有マイクロ粒子の生成機構の解明研究
研究期間: 平成30年6月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録: 福島第一原子力発電所事故時において環境中に放出された放射性Csを高濃度で含有するマイクロ粒子、いわゆるCsMPの生成機構は明らかにするため、環境試料の分析と実験により生成した粒子を分析することから、CsMPの生成機構の解明に取り組んだ。環境中のCsMPの電子顕微鏡などでの分析により、粒子にはウランが含まれることを明らかにした。さらに、詳細な分析からウランは鉄酸化物に包まれる形態で存在することを明らかにした。

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課題番号:共2018-18

研究代表者: 大貫敏彦
研究分担者(所属):

小室真保(教務部・教務部長)
川添一郎(東京バイオテクノロジー専門学校/講師)
加藤友彰(先導原子力研究所・D2)

研究課題名: 希土類元素の糸状菌による取り込み機構の解明研究
研究期間: 平成30年6月1日 ~ 平成31年3月31日
抄録: Pseudomona fluorescensへのCeの吸着のpH依存性を調べた結果、Ce初期濃度が0.01mMの場合には細胞表面への吸着が支配的であった。一方、Ce濃度を0.1mMとした場合には、吸着とは異なる嚢腫機構であることを明らかにした。さらに、希土類を添加した培地でP. fluorescensを培養したところ、ほとんど生育しなかった。一方、糸状菌をYb添加培地で生育したところ、実験に用いた7種類の糸状菌の中で5種類が重量比で85%以上、2種類が50%の生育を示した。この結果は、糸状菌が3価希土類に対して耐性を有している可能性が有ることを示している。

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