木村 祥紀
原子力工学部門

研究の特徴
安全性や核セキュリティ特性を強化することで社会・環境リスクを低減した革新的原子炉に関する研究に取り組んでいます。悪意ある人為的行為を想定した異常事象に対するリスク評価に基づき固有の安全・核セキュリティ特性の向上方策を検討し、核物質防護や安全保護といった外在的措置を含めた原子炉の最適化設計手法の検討を進めています。さらに、原子力利用に対する社会的信頼の確保と透明性向上を図る研究として、核物質や放射性同位元素(RN物質)の来歴を特定する「核鑑識」に関する分析手法の高度化や低コストで信頼性の高い分析技術を開発するため、深層学習モデルなどの先進的なアプローチの適用、RN物質のトレーサビリティ向上に資する概念構築にも取り組んでいます。
研究の概要
- 社会、環境リスクを低減した革新的原子炉の開発
安全・核セキュリティ特性を最適化することで社会・環境に対するリスクを低減した革新的原子炉の実現を目指し、悪意のある人為的行為を起因とする異常事象に対する原子炉の核熱安定性や機械的・化学的安全性の評価、それらに基づいた原子炉の最適化設計手法の検討を行っています。燃料・炉心設計アプローチに基づいて人為的な改変が困難な内在的特性の検討を起点とし、それを補完するアプローチである安全保護、保障措置、核物質防護、といった外在的措置の効率性・経済性を含めた最適化を行い、安全・核セキュリティ特性を備えた革新的原子炉やそれらの特性のシナジーの実現に向けた最適化手法の提案を最終目標としています。 - 「核鑑識」による核物質や放射性同位元素のトレーサビリティ向上研究
核物質・放射性物質の来歴を明らかにする「核鑑識技術」に関する知見をもとに、現代社会の持続発展に不可欠な存在となっている核物質や放射性同位元素(RN物質)の追跡可能性(トレーサビリティ)を向上させることで、RN物質利用に関する「透明性」を向上する方策と手段を提案する研究を行っています。この研究によりRN物質の軍事転用や犯罪利用等が困難となることから、核拡散・核セキュリティリスクを低減できるだけではなく、国際保障措置・核物質防護措置の効率化、原子力システムにおける設計想定を超えた万一の事案対応にも貢献することが可能となります。深層学習モデルといった先進的なアプローチを適用した核鑑識分析アプローチの高度化・低コスト化・信頼性向上に資する研究を起点とし、RN物質の検知や来歴の特定を容易にするトレーサー添加物とその検知・測定手段をパッケージ化したトレーサビリティ向上方策の提案により、RN物質の社会利用促進に貢献することを最終目標としています。
キーワード
核セキュリティ、核鑑識、リスク評価、安全、核不拡散、原子炉・燃料設計、核検知