所長挨拶

所長
加藤 之貴

本研究所は2024年10月から東京科学大学 総合研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所となりました。研究所長としてご挨拶申し上げます。

本研究所は1956年に東京工業大学理工学部附属原子炉研究施設として設立され、その後、原子炉工学研究所、先導原子力研究所を経て2021年6月に東京工業大学科学技術創成研究院 ゼロカーボンエネルギー研究所となりました。一貫して日本の発展と豊かな暮らしの礎となるエネルギーの安定供給に関わる研究開発に取り組んでおります。

21世紀を迎え、物・情報の豊かな便利な時代を迎えたと思ったのも束の間、急激な気候変動、感染症拡大などの環境変化に翻弄され、人類は自然の大きさと人間の無力さを認識しだしております。特に地球環境の下に人類が持続的に生きるために、人為的な二酸化炭素(CO2)排出抑制の必要性が顕在化しております。そこで本研究所はゼロカーボンエネルギーを用いたカーボンニュートラル技術の開発を通して、CO2を排出せずに地球と共生しかつ豊かな社会の構築に貢献することを目的にゼロカーボンエネルギー研究所として改組設置されました。

豊かな社会生活の駆動には一次エネルギーが必要です。本研究所ではこれまでの化石エネルギー依存を極力減らし、ゼロカーボンエネルギーである再生可能エネルギー、原子力エネルギー、バイオマスまた産業排熱などを活用する研究を行います。再生可能エネルギーは不安定であるため、その普及にはエネルギー貯蔵技術が必要です。貯蔵技術として蓄電、蓄熱、エネルギーキャリア技術、また新なエネルギーネットワークシステムを検討します。原子力エネルギーは社会に不安をもたらしておりますが、指令型で大規模に安定的に発電できる貴重なゼロカーボンエネルギーであり国際的には開発推進が進んでおります。そこで、安全かつ経済的な原子力エネルギーシステムを開発します。あわせて放射線利用技術研究を進めます。炭素は古来より人類と親和性があります。そこで炭素利用を許容しつつ環境にCO2を排出しない、ゼロカーボンエネルギーを用いた炭素循環産業システムの創成を目指します。この実現のためにCO2の回収、資源化、循環利用の進展を目指します。

そして研究の社会実装を加速するためにグリーン・トランスフォーメーション・イニシアティブ事業、Science Tokyo GXI、https://www.gxi.iir.titech.ac.jp/、を展開します。Science Tokyo GXIでは産学官、社会、市民が連携したオープンイノベーションでグリーン・トランスフォーメーション(GX)研究開発を展開します。とくに2024年10月に東京医科歯科大学との統合を機にWell-being、医療にGXの対象範囲を広げ、より社会に役立つGX実現を目指してまいります。

本研究所の取り組む研究テーマは未踏領域が多く個人、一組織での達成は困難です。テーマに賛同頂ける多くの方のご協力が必要です。本研究所が一つの拠り所となり、国内外の多くの方々と協力して将来に希望を持てる社会の構築に役立ちたく思っております。

本研究所に対するご指導、ご支援を頂ければ大変幸いです。