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赤塚 洋 准教授が第44回応用物理学会論文賞を受賞しました。

2023年3月22日

赤塚洋准教授のグループによる研究論文が、第44回応用物理学会優秀論文賞を受賞しました。また、当該論文の責任著者である赤塚准教授が、上智大学で開催された第70回応用物理学会春季学術講演会で受賞記念講演を行いました。


応用物理学会会長 平本俊郎先生による授賞

 

受賞概要

受賞者:
大西広、山崎文徳、箱﨑喜郎、竹村将沙樹(以上 赤塚研究室OB)、根津篤(オープンファシリティセンター)、赤塚洋(ゼロカーボンエネルギー研究所)
授賞者:
応用物理学会
賞:
応用物理学会論文賞
論文題目:
Measurement of electron temperature and density of atmospheric-pressure non-equilibrium argon plasma examined with optical emission spectroscopy

大気圧非平衡プラズマが,学術・技術の最前線で頻繁に議論される様になってから,既に20年以上が経過しました.水中・液中放電でも生成可能ですし,医療・農業・食品工業・繊維産業など,新たな応用も増えています。ところが,いまだに大気圧非平衡プラズマの電子温度Te・密度Neの計測については,実験室規模で簡便に実行可能な標準的方法が確立されておりません.そこで,汎用的な大気圧非平衡プラズマのTe, Neの計測手段が是非とも必要です。我々も大気圧非平衡プラズマを生成し,その連続スペクトル計測から,電子温度・密度を計測しようと研究を計画し実行しました.電子エネルギー分布関数として、ある特定の形状を仮定して、理論計算と実測スペクトルを比較し、ベストフィッティングパラメーターとして電子温度Te・密度Neが求められることがわかりました。また、得られた値の妥当性は、導出された電子温度Te・密度Neの値を、衝突輻射モデルという信頼できる計算モデルで励起状態数密度を計算し、それと線スペクトル強度の実測値を比較することで実行しました。これにより大気圧非平衡プラズマの電子温度・密度が、実用的で簡便な連続スペクトルの発光分光計測で求められることが確かめられました。

なお、本論文は2021年の同誌のSpotlight論文に選出され、2022年には一つ格が上のHighlight論文にPlasma分野からは唯一選出されました[https://educ.titech.ac.jp/ee/news/2022_07/062918.html]。さらに、応用物理学会 プラズマエレクトロニクス分科会から、「第20回(2022年3月)プラズマエレクトロニクス賞」に選出され、ついにこの春、第44回(2022年)応用物理学会論文賞を授与されました。 Plasma分野からは本件のみ、レター誌でないFull Paperもこれのみで、希少な価値を持っていることがわかります。同時受賞者には、ノーベル賞受賞者の中村修二博士のお名前もあり、また同時表彰の応用物理学会解説論文賞には、全固体電池で高名な本学 菅野了次先生のお名前も拝見できます。応用物理学会論文賞の重みがひしひしと感じられます。

今後、我々の研究成果による計測方法を、電気電子工学はもちろん、医学や歯学、さらに農業・食品工業など、様々な各種の応用の現場に広げたいと思っております。特に歯科分野への応用の可能性につき、医科歯科大学との共同研究を検討中です。